光害とは?
「光害」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?都市部を中心に、過剰な照明のせいで睡眠のリズムが狂ってしまったり、動植物の生態系が撹乱されてしまったりします。夜行性の動物たちの生態系が脅かされるだけでなく、植物の寿命も短くなったりすることが明らかになっています。
過剰な照明はエネルギー資源の浪費にもつながりますが、ポジティブに捉えれば、適切に照明を使っていけば、2030年まで人口がこのまま増加しても、現在の電力消費を維持できるというデータもあります。
海外ではいち早くスロベニアが2007年、フランスで2018年に光害の規制が始まりました。例えば、フランスでは住居を除いて、午前1時から7時までの間は、照明を消さなければなりません。市庁舎、ノートルダム寺院、凱旋門などのモニュメントのイルミネーションが有名なため「光の街」(La Ville Lumière)を自称するパリも、この例に漏れません。さらに2022年からは電力危機回避のため、これまで午前1時までだった歴史的建造物のライトアップが今月23日より22時消灯に短縮されますエッフェル塔も例もれず、23時45分をもって消灯となります。
夜間照明規制のキャンペーンの成功により、何百万羽もの鳥が暗くなったテキサス州都市を安全に渡り歩くようになった。
人間だけでなく、光害は生態系に大きな影響を及ぼします。動植物の昼夜のリズムが損なわれたり、水中ではプランクトンが藻類を食べることをやめ、急激に水質が悪化したりします。昆虫の発育や繁殖にも影響が出ます。
様々な事実が明らかになっている今でも、安全面や経済優先がされ、照明を規制するのは困難な場合が多いですが、今日はアメリカ大陸を横断する渡り鳥たちを救った、テキサスの「Lights Out!テキサス・キャンペーン」をご紹介したいと思います。
キャンペーン前のHoustonのスカイライン(出典)
キャンペーン中のHoustonのスカイライン(出典)
テキサスは、アメリカ大陸を上下する鳥たちにとって最も重要な渡り鳥の通り道の真ん中に位置し、春と秋の渡り鳥の間に、約20億羽、つまり全米の3羽のうち1羽がテキサスを通過します。
テキサスを移動する400種以上の鳥類を保護するため、オーデュボン協会のヒューストン支部とテキサス州のパートナーは、2年前から「Lights Out!テキサス・キャンペーン」を2年間実施し、目覚ましい成果を上げてることが報じられました。
アメリカでは、何十万もの渡鳥たちが、建造物に衝突し命を落としています。渡り鳥の80%が夜行性であり、シカゴで活動する研究者たちの調査の結果、高層ビルの外部照明の反射を減らすことで、鳥の衝突死の60%を防ぐことができることが明らかになりました。
本来ならば、星や月の光を手がかりに方向を決めたり、コミュニケーションをしたりしていますが、それらの自然の光の代わりに、人工の光り輝くイルミネーションに惹きつけられてしまうと、道を誤ってしまいます。また一旦その光の洪水の中に紛れ込んでしまうと、鳥たちは極度に興奮し、街の光を反射したガラス張りのビルに正面衝突して死んでしまうそうです。
この渡り鳥の問題そのものは、私たちの生活に直結していることではないかもしれませんが、過剰な光を削減することで、二酸化炭素の排出も抑えられ、電力コストも抑えられ、不眠やその他自律神経の乱れも解消されることができるとするならば、このような動きは、とてもポジティブなことだと思います。